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「ちょっと待って下さいね」。社長室を訪れるとネクタイを締めながら、日焼けした顔をほころばせた。 39回卒の矢倉英一さん。 トラックや船舶、飛行機など自前の輸送手段を持たない裸一貫の男が物流の世界に乗り出し、昨春、東京証券取引所のマザーズ上場にこぎ着けた。輸送手段を持たない、いわゆるフォワーダー(国際貨物運送業)で海上輸送に特化し、専業での上場は同社が初めて。 昨年の売上高は89億円というから話は大きい。 中国に13か所の拠点を持ち「アジア、ASEAN地域を固めたあとは欧米へも進出してみたい。次の目標は東証一部上場です」と夢は広がる。 出身校の和歌山県立串本高校では乞われて300人の生徒を前に「なんでもやってやろうという思い込みの心。つまり、快の心を持つことが大切ですよ」と持論を説いたと言う。 「ちゃんとわかってもらえたやろか」 実家が漢方薬店をしていたので薬科系を目指したが結果的には、本学の経営学部に。鈴木ゼミで禅についての手ほどきも受けた。 「当時のキャンパスで一番懐かしいのは図書館前の芝生広場。あそこでよう寝ころびました。大事にしていたライターをなくしてしまったことがあります。大経大は生涯の誇りです」 休日には郷里・串本の海へ。「この間はイサキが入れ食い。釣った魚を刺し身や煮物にして缶ビールを空けるのが楽しみです」 一部上場も、もはや竿の先。話ぶりから幕末の志士坂本龍馬を連想させた。 (聞き手=山本長彦)
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