2008
 
2008年度
寄稿原稿特集

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エッセイ集「あの海にもう一度逢いたい」を出版 木下利子さん(旧姓中谷)16回卒

 兵庫県三田市でご主人と幸せな老後をお過ごしの木下利子(とし子)さんが、このほどエッセイ集「あの海にもう一度逢いたい」を日本文学館から出版された。

 木下さんは、戦後間もない昭和25年3月本学を卒業された。「母の勧めで自宅に程近い神戸女学院に進学しましたが、女の園に馴染めず、二つ上の姉が通っていた本学に、2年生の時に編入しました。当時女学生は、私を入れて3人でしたが、さすがに男の方はよく勉強しておられ、とくに英語はついていくのにやっとの思いでした」と、学生時代を懐かしそうに語られる。

 卒業後会社勤めをされたが、「声楽をやっていた」という経験を買われて音楽教師に誘われ、それが縁で小、中学校の教職の道を歩まれることになる。

 やがて教職の道を離れてエッセイを書き始めることになるが、それも65歳の時、膀胱ガンに見舞われ、障害者手帳を持つようになってから。「何か自分にできるものがないだろうかと考えていたところ、NHKのエッセイ教室を教えていただき、ここで4年間勉強しました。もっとも書くことが好きだった私は、ある時『雪の日』を投稿したところ、それなりの評価をいただき、それがきっかけでこのエッセイ集を出版させていただくことになりました」と。

 学生時代のたった3人だった女子学生との出会いと別れ、また幼少の頃、素足で歩いた香炉園や芦屋、打出の砂浜の感触、そこでの地引網を曳く漁師の姿などが行間にあふれ、変わり果てた現実とのギャップに読む人に感動を与える。

 「戦前、戦中、戦後の動乱期を生き抜き、時代は大きく激変し、私自身も障害を持つ身になりましたが、『書く』という幸せを見つけ、これからもその時々の思いを掬って書いてみたいと思っております」と物静かに語っておられた。

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このほど出版されたエッセイ集