2008
 
2008年度
寄稿原稿特集

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戻ってくるブーメランに、戻らぬ人生を賭ける世界一のブーメランプレイヤー 栂井(とがい) 靖弘氏(60回卒)

 私たちの身の回りには不思議なことが多くありますが、空中に投げて戻ってくる「ブーメラン」というのもその1つ、皆さんご存知ですか。

 このブーメランの第2回世界大会が06年日本で開かれ、飛距離、正確さ、キャッチを競う「オージーラウンド」種目で栂井さんが優勝されました。正確なコントロールが持ち味の栂井さん、プロゴルファーのように風を読みブーメランが戻ってくるまでの軌跡を予測する。「君は風と友達なのか」と、海外の選手が握手を求めたという。

 ブーメランを知ったのは「生活の中の数理ゼミ」担当教授、西山豊先生との運命的な出会いからです。ゼミの面接で「ブーメランはなぜ戻ってくるのか」の説明後、実際に学生たちに投げさせたところ誰も戻ってこない。が、先生が投げると数秒後に見事に先生の手に戻ってくるではないか。もともと手品が好きで、人を驚かすのが趣味の栂井さん、それが逆に驚かされ押されたようにブーメランの虜になった。先生から借りたブーメランを淀川で500回以上投げたという。先生の指導で次第に上手く投げられるようになり、ブーメランの製作も自分で始めた。

 93年の4年生の時全国大会に出場、6位に入賞したが日本で開かれる世界大会では歯が立たなかった。しかしこの頃から「こんな面白いスポーツはない。一生の仕事にしよう」と思い始め、05年会社も辞め、ブーメランの普及のため講習会を開催したり本の出版販売など始められた。06年には世界大会のホスト国として大会運営に携わりながら見事優勝、日本人初の快挙を成し遂げた。

 ところでブーメランは投げれば「重力」に逆らうように戻ってくる。ならば「無重力」の状態ならどうなるか。知人に話したところ幸運にも宇宙飛行士の土井隆雄さんに会うことができ、ブーメランの不思議さを話すと宇宙でも飛ばしてみようと快諾を頂いた。ブーメランの投げ方もコーチし何枚かを贈った。今年3月打ち上げられたスペースシャトルの宇宙ステーション内実験でもくるくる回ってちゃんと戻ってきたという。このニュースは世界を駆け巡り日本の新聞でも報道され、見られた方も多いことでしょう。栂井さんは宇宙を飛んだブーメランを「ドリームシャトル」と名付け、西山先生にも見せられた。

 ブーメランに魅せられブーメランに賭けた人生、「夢に向かって沢山の幸せが戻ってきました。この感動を1人でも多くの方に伝えたい」と栂井さん。11月3日の同窓会総会で記念講演をされ、最後に会場いっぱいの同窓生に投げられたブーメラン、会場をグルッと回りやがて栂井さんの手元に返ってきた瞬間、「おーっ」と大歓声が沸き起こりました。

(聞き手=平田義行)

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